20年ぶりに漆で刷る。錦古里漆器店×TSUGI がつくる、漆のグラフィックプレート
- 2026.10.06
大家さんである錦古里さんと、私たちのものづくり
福井県鯖江市河和田地区にある、デザイン事務所「TSUGI」が運営するショップ「SAVA!STORE」。私たちは、錦古里漆器店さんの敷地・建物を間借りして店を構えています。

建物や外観の佇まいは昔ながらの錦古里漆器店のまま(photo:Yohei Sasakura)
錦古里漆器店さんは、昭和元年から続く老舗の漆器工房。お膳や重箱といった「角物(かくもの)」を中心に、長年丁寧な漆塗りを手がけられてきた職人さんです。現在はご兄弟で工房を切り盛りされています。

錦古里漆器店3代目・錦古里正孝さん
出勤をするたびに漆の香りがふわりと漂うくらいの距離感で、錦古里さんのお仕事を日々感じながら、私たちは普段から過ごしています。

「いつもお世話になっている錦古里さんと、一緒に新しいものづくりができないか」
「私たちのデザインと錦古里さんの技術を掛け合わせて、今の暮らしに馴染む漆のアイテムをつくれないか」

日頃の感謝とリスペクトを原点として、同じ敷地で過ごす日常の対話から本企画がスタートしました。
工房に眠っていた、漆の「シルクプリント」という接点
企画の相談で錦古里さんの工房を訪ね、過去の製品を見せていただく中で思いがけない発見がありました。それは、漆を混ぜた塗料で柄を刷る「シルクプリント」の技術です。

かつて木製の丼重が主流だった時代、錦古里漆器店では金や銀で「菊水」模様を施した蓋が大ヒットし、何千個も刷り上げていた実績がありました。しかし、時代の変化とともにシルク印刷の技術は使われなくなり、20年以上の歳月が流れていました。

菊水の水(波柄)の版
改めて錦古里さんが見せてくれた古いシルク版や印刷台は、TSUGIが普段Tシャツ等にプリントしているシルクスクリーンと全く同じ構造でした。
特に驚いたのは、歳月が経っているのに機械や道具がまだ使えたこと。

錦古里さん自身は「まだ使えるもんやねえ〜」とニコニコとされて特に驚かれる様子もありませんでした。ただ、それは貴重な自然塗料である漆を使用する職人さんとして、素材や道具を文字通り大事にすることは、錦古里さんにはあまりにも当たり前すぎることだからなのかも、と。

同じ手法でモノづくりをしていた驚きと親和性、そして長年使っていなかった技術にもかかわらず「やってみましょう」と前向きに応えてくれた錦古里さんの姿勢もあり、この漆のシルクスクリーン企画は本格的に動き出しました。
手元で刷り切れる大きさと、絵柄が映えるカタチの探求

開発初期には大きなお盆の制作も検討しました。しかし、お盆の広い面積に対してイラストをどう配置し余白を作るかはデザイン的に難航し、さらに錦古里さんの工房にある印刷設備には大きすぎて乗らないという物理的な制約も重なりました。

別の印刷会社に外注すれば大判サイズも製作可能でしたが、私たちが大切にしたかったのは「錦古里さんと一貫して最後まで一緒に作り上げる」ということでした。
その結果、錦古里さんの設備で印刷が可能であり、かつイラストの収まりが良い楕円形プレートという形に着地。

コンパクトであるからこそ、食卓だけでなく飾って楽しむこともできるという利点も生まれました。井上徳木工さんによる積層ベニヤの木地を使用し、拭き漆を施しています。

河和田の素材と技術を詰め込んだ特別なプレートに仕上がりました。
手仕事の細やかさと、現代の空間に馴染むデザインの調整

製品化までの道のりは、漆シルクプリントとデザイン双方での試行錯誤の連続でした。
錦古里さんにとっては、細い線を潰さずに漆で表現することが最大の課題でした。一度で綺麗に刷れないと、重ね刷りした部分の漆だけが厚くなってしまうため、漆の絶妙な粘度調整やスキージーを引く力加減など、手作業での細やかな調整が求められました。

一方TSUGIのデザインチームは、一つひとつ表情の異なる木目(拭き漆)の上に単色で印刷されることを想定してデザインを調整。
抜け感のある繊細な線が潰れない太さを探り、シルエットや直線だけで構成することで、現代の空間にすっと馴染むシックな印象を目指しました。

サイズはW200×D130mm
また、漆ならではの「色の変化」も大きな特徴です。刷りたては色が濃く見えますが、わずか2時間ほどで漆が透け、下地の木目がふわりと浮き出て表情が落ち着いていきます。

数日、数ヶ月、数年と時間が経てば経つほど風合いが変わり、その経年変化に愛着が湧いてくるはずです。生きている素材だからこそ生まれる、風合いの変化を楽しめます。
漆プレートデザイン紹介
今回の商品開発では、5種類のデザインを企画しました。
1)犬(漆:白)

Design:大坪千夏
幾何学的な直線だけで構成された犬たちが、輪を描いて追いかけ合っています。器の縁に沿って配置し中央を広く空けることで、上に置くものを引き立てる実用的な余白をつくりました。
2)花(漆:黒)

Design:大坪千夏
様々な形の花びらや茎を組み合わせました。シルエットで表現しつつ繊細な線で描き、和の空間だけでなく洋の食卓にも馴染む、甘くなりすぎないモダンでシックな印象に仕上げています。
3) 花鳥風月(漆:黄)

Design:大坪千夏
「花」「鳥」「風」「月」の4要素をひとつの情景として構成。伝統的なモチーフをリスペクトしつつ、シルエットと抜け感のある線でグラフィカルに再解釈しました。
4)馬(漆:青)

Design:河﨑大輝
制作年(2026年)の干支である「午(うま)」。躍進や飛躍の象徴として、勢いのある力強いシルエットで描いています。
5)ぼん(漆:オレンジ)

Design:河﨑大輝
「ぼん」のひらがな2文字を、ポップで力強いタイポグラフィで表現。小物を置くお盆としての用途ともリンクさせました。
のせたり、飾ったり。日常に溶け込む漆の新しいかたち
漆プレートは、本来のプレートとしての役割はもちろん、使い手の自由な発想で楽しんでいただけます。
お部屋の棚やスタンドに立てかければ、アートピースのようなインテリアに。玄関先やデスク周りに置いて、お気に入りのアクセサリーや鍵を乗せる小さなトレイとしても。

もちろん、焼き菓子や朝のパン、おつまみを乗せて、いつもの食卓にちょっとした特別感をプラスすることもできます。
「漆だから」と構えずに、毎日の暮らしに気軽に取り入れてみてください。
SAVA!STOREにて10/9(金)より店頭販売を開始します
大家さんとして、同じ作り手として。
いつも側にいてくれる錦古里さんと対話し、昔の技術を今の私たちの目線で解釈し直すことで、特別な漆プレートが生まれました。

10月9日からの「RENEW」期間中、SAVA!STORE店頭にて販売を開始いたします。拭き漆の質感や、印刷の立体感、一つひとつ異なる木目の表情を、ぜひ店頭でお確かめください。
また、RENEWにお越しの際は、すぐ隣にある錦古里漆器店の工房にもぜひ足を運んでみてくださいね。

ECサイトでの販売につきましても、準備が整い次第スタートする予定です。遠方の方も、どうぞ楽しみにお待ちください。
【RENEW/2026 開催概要】
会期: 2026年10月9日(金)〜 10月11日(日)
所在地: SAVA!STORE(福井県鯖江市河和田町19-8 錦古里漆器店敷地内)
※期間中はすぐ隣の錦古里漆器店の工房見学やワークショップもお楽しみいただけます
